相続登記の義務化

相続登記の義務化

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相続登記は義務か?

これまで、相続登記は、表示の登記(鏡の部分)を除いて、「登記をする」「登記をしない」は、相続によって取得した方の自由でした。
そのため、長年、被相続人名義(先代名義、あるいは先々代名義等)のままにしておいた例も数多くあり、「所有者不明」不動産を増加させた一つの原因であるといわれてきました。
本来、相続による所有権移転をはじめ、いわゆる権利の登記は、登記をするか否かは名義人の自由(権利の登記)であったのです(登記をしない方は、その権利を第三者に対抗できませんが、異議を唱える第三者もいない等の理由で、昔は登記(名義変更)をせず、そのままにしてある例もありました。)。
しかし、長年名義をそのままにしておいたため、相続人の数も膨大になり(仮に子が既に死亡していれば、孫に行きます。その孫も死亡していると曾孫にも行き、名義をそのままにしていると関係者がどんどん増えていきます。そのため、会ったこともない名義人のために他の相続人から実印の押印を要求されるのです。)、また、相続人がいなくなったりして、現在の所有者が誰か分からない不動産が増えてきたのです。
そこで、この相続登記を義務にして、所有者が不明な不動産を減らす試みとして、令和3年4月21日に、民法、不動産登記法の改正法が成立し、同月28に公布されました。
相続登記の義務化(施行)は、公布から(周知期間も必要ですので)3年以内です。
これに関連すれば、住所等の変更(今は法改正されましたが、その前は、除票(除かれた住民票)は5年で役所のコンピューターから削除されていました。つまり、亡くなってから5年後にはその書類が取れませんでした。)も、公布から5年以内に義務になります。
これについては、後述するQ&Aを見ながら理解を深めていきましょう。


いつからそうなるの?

相続登記の義務化ですが、相続によって不動産を取得した人は、その日から(取得した日)3年以内に相続登記をしなければならず、その義務を正当な理由なく怠れば10万円以下の過料が科されます。
この正当な理由がある場合は、上記期間を経過して相続登記をしなくても過料の制裁は科されません。
そして、正当な理由ですが、例えば、相続が発生しましたが、遺産の分け方で他の相続人と揉めており、3年以内に話し合いがまとまらないことが考えられます。
その場合、相続人の一人が、登記官にその旨を申し出ると、登記官が職権で、相続人申告登記(仮称)を行い、過料は科されないことになっています。
しかし、あくまで過料を科されないだけであって、相続登記をしたことにはなりませんので、遺産分割協議が整い、所有者になった段階で相続登記をするようにしましょう。
詳細は、実際に施行された後、通達等で明らかになっていくと思われます。

名義変更をしても、売れないし、持っていても仕方ない不動産は?

このような不動産を引き継ぐ相続人もいます。
相続放棄をして免れたいが、その期間が経過している場合、公共団体に寄付しようとしたが断られた等、まさに、「負動産」となってしまい名義変更もしないまま何十年も過ぎることも多かったと思われます。
そのような場合に備えて、「相続等により取得した土地所有権の国庫帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が上記に関連して成立し、公布から2年以内に施行されることとなりました。
法律が成立し、施行されることはよいのですが、次の不動産は対象とはなりません。
@建物の存する土地
A担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
B通路その他の他人に使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
C土壌汚染対策法2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
D境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
E崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
F土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
G除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
H隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
I@〜Hまでに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
以上の要件をクリアーしなければ、承認申請は認めれません(相当にハードルは高いです。)。
さらに、承認申請が認められた場合、10年分の管理費用を納付しなければなりません。

名義変更登記に関するQ&Aです。

Q1 なぜ、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更の登記が義務化されるのですか。
A1 将来において、所有権不明の土地が発生するのを予防するためです。最近、所有者不明土地の存在による景観・治安の悪化、近隣損害及び公共工事の実施の遅れ等が問題となっていますが、所有者不明土地となる要因として最も多いのが相続登記がされていないこと、次に多いのが所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更の登記がされていないことであるといわれています。そのため、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更の登記の申請を義務付けて、不動産の所有者に関する最新の情報を公示することを目的として行われます。

 

Q2 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更の登記の義務履行には、期限が付されるのですか。
A2 転居、婚姻、商号変更又は本店移転等によって不動産の登記名義人の氏名、名称又は住所が変更された日から、2年以内に該当変更の登記の申請をしなければなりません。なお、住所表示の実施や区制の施行等が生じた場合については、登記の申請の義務がないと思われます。

 

Q3 2年以内に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更の登記を申請しなかった場合、何らかんのペナルティはありますか。
A3 正当な理由がないのに登記の申請を怠ったときは、5万円以下の過料が科されます。

 

Q4 2年以内に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更の登記を申請しなかった場合、直ちに過料が科されることになるでしょうか。
A4 過料が科せられるのは、あくまで、正当な理由がないのに登記の申請を怠ったときに限られます。具体的には、正当な理由の有無等を登記官がどのように判断するかについてですが、登記官が登記名義人に対して登記の申請をするようあらかじめ催告し、それでも登記の申請を行わなかった場合に限り過料を科すこととする等、登記名義人の負担が重くならないように運用される予定です。なお、その運用は、今後の省令や通達によって定められます。さらに、将来的に、登記官が住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記のシステム上の情報を定期的に照会し、不動産の所有権の登記名義人の氏名、名称又は住所に変更があることが判明したときには、職権でそれらの変更の登記をする仕組みを整備することが予定されています。

相続人申告登記

1 遺言がない場合
  不動産の名義人に相続が開始したときには、当該不動産の所有権を取得した者は、「自己のために相続開始  のあったことを知り」「当該不動産の所有権を取得した」ことを知った日から3年以内に相続登記をしなければな  らないのが原則であるが、同期間内に、当該不動産の名義人について相続が開始した事実と自らが当該不動  産名義人の相続人である旨を登記官に申し出ることができるようになった。
  これにより、複雑な相続登記をしなくとも義務を履行したものとみなされることになった。
  これが、「相続人申告登記の申出」である。
2 遺言がある場合
  遺言により、不動産の名義人の相続人に「遺贈」するとなっていたときは、当該相続人は、「自己のために相続  が開始したことを知り」「当該不動産を取得したことを知って」から3年以内に相続登記をする義務を負うことに  なるが、この場合も例外として「相続人申告登記の申出」をすることによって、相続登記の義務を履行したとみ  なされる。
3 遺産分割が成立した場合
  所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、法定相続分の割合に応じて所有権を取得した者は、  当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記義務を負うが、これに加えて遺産分割によって  所有権を取得した者は、当該遺産分割から3年以内に相続登記をする義務を負うが、次の点に注意が必要  である。
(1)法定相続登記後に遺産分割が成立した場合の追加的申請義務
   遺産分割によって、法定相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産分割の日から3年以内に相続  登記をしなければならない。
(2)相続人申告登記の申出後に、遺産分割が成立した場合の追加的申請義務
   申出後に、遺産分割が成立したときは、遺産分割の日から3年以内に相続登記をしなければならない。
4 代位者や官公署の嘱託により登記がされた場合は、申請義務については適用しない。
5 経過措置
  令和6年4月1日から相続登記は義務になるが、その前に発生した相続については、「当該施行日前に所有  権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相  続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日又は当該施行日のいずれか遅い日か   ら3年以内に相続登記をしなければならない。
6 正当な理由
  相続登記は原則義務となるが、正当な理由があれば、その義務を免れることとなる。例示をするが、この例示に  あてはまらないから正当な理由がないとは言えず、それ以外でも、個別具体的な事情があれば、正当な理由が  あると判断される。
@相続登記等の申請義務に係る相続について、相続人が極めて多数の上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
A相続登記等の申請義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかになっていない場合
B相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
C相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
D相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合


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