遺言のすすめ

遺言のすすめ

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遺言とは

遺言のすすめ

 

残された家族のために遺言を残しませんか。

 

1 遺言とは

 

遺言は,遺言者の生前における最終的な意思表示を尊重して,遺言者の死後,その意思表示を実現させるために制度化されたものといえます。また,法律上「自己の死亡と共に身分上あるいは財産上の法的効力を発生させる目的で,一定の方式に従って行う,相手方のない単独の意思表示」であると言われております。

 

そして,この遺言は,15歳に達している者は,遺言をすることができる,とされており(民法 961条),行為能力に関する規定(民法5条,9条,13条,17条)は適用しないとしていることから,未成年であっても,あるいは成年被後見人にであっても意思能力さえあれば単独で遺言をすることができます(民法962条)。

 

遺言の必要性は,色々言われておりますが,遺言があれば防げた親族間の紛争など,予防効果が高い場合も多いのが実際のところです。また,遺言の内容によっては,相続人間でトラブルになり,親族であるにもかかわらず,他人以上の骨肉の争いが展開されるのも相続ではありがちなお話です。


遺言の方式

遺言は,法律に定める方式に従って行わなければなりません。普通の方式として自筆証書遺言(民法968条),公正証書遺言(民法969条),秘密証書遺言(民法970条)の3種類があり,また,特別の方式として,民法976条から979条まで規定があります。

 

遺言の要式を厳格にする理由は,遺言者に慎重な考慮をさせ,遺言の内容を明確にし,遺言者の真意を確保するところにあります。

 

 

1.自筆証書遺言(民法968)
各要式の中でも,一番手軽で費用もかけずに作成できる遺言で,遺言の秘密が守られますが,問題点もあります。
デメリットしては,紛失や変造や偽造がされやすいということと,遺言者の死亡後発見されない可能性もあります。
この遺言をするには,遺言内容の全てと日付,氏名を自分で書いて押印を要しますが,いずれかが欠けていると遺言が無効になります。
2.公正証書遺言(民法969)
公正証書によってする遺言です。
遺言者が,遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人が口授を筆記し,これを遺言者及び2名以上の立会い証人に読み聞かせ,遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後,各自がこれに署名・押印することを要します。
また,口がきけない者,耳が聞こえない遺言者でも通訳人を通して遺言することができます。

 

実際には,事前に公証人と遺言内容を十分に打ち合わせておき,原案を公証人に作成してもらって,証人2名以上と調整のもとで,公証人役場で上記形式に則る方法で行います。
唯一,この方法による遺言の場合,家庭裁判所の検認の手続き(民法1004)は不要のため,迅速な遺言内容の実現が可能となります。
3.秘密証書遺言(民法970)
遺言者が,遺言内容を記載した書面(自筆証書と異なり,自書ではなくワープロで記載しても可能)に署名・押印し,遺言者がこれを封じて書面に押印した印章をもって封印して,公証人1名及び証人2人以上の前に封書を提出して,自己の遺言である旨とその筆者の氏名及び住所を申述しなければなりません。
遺言内容を,第三者に知られることなく行える遺言ですが,逆に,遺言の内容チェックを受けていないことから,無効となる可能性もあります。
なお,この秘密証書遺言の方式に欠けているとしても,自筆証書遺言の要件を具備していれば,自筆証書遺言として効力を有します。

遺留分の考慮

遺留分とは,一定の相続人のために法律上必ず遺留しておかなければならない遺産の一部割です。

 

遺留分の算定は,被相続人が相続開始のときにおいて有していた財産の価額に,贈与によって他に処分されて現存遺産に残っていない財産の価額をも加えて,そこから相続債務を控除して,これに対し,相続身分に応じて2分の1ないしは3分の1を乗じて算出されます。

 

遺留分を超えて,被相続人がその財産を処分した場合,遺留分を侵害する処分は当然無効となるものではなく,遺留分を侵害する限度で遺留分権利者の減殺請求に服するにとどまります。

 

したがって,遺留分を侵害する遺言も,無効ではなく,遺留分を侵害するような遺言をすることもできますが,遺留分権利者より遺留分減殺請求がなされると,最高裁の考えに従えば,遺留分減殺請求の性質が,「遺留分減殺請求によって遺留分侵害行為の効力は消滅し,目的物の権利は当然に遺留分権利者に復帰し,その結果,遺留分権利者は,既に履行されたものに対して復帰した権利に基づいて目的物の引渡請求を,未履行の部分については,履行を拒絶することができる」とされていることから,その遺言内容が全て実現できるとは限らない,という問題が生じてきます。

遺言事項

遺言に何でもかんでも記載しておけば,その実現は約束されたも同然だ,と考える前に法律上の遺言として効力をみていきたいと思います。

 

法律的に遺言効力を認められる事項は,実際には限られております。これは,既述したとおり,遺言は遺言者の単独行為であり,遺言者の意思のみによって成立し,一定の者の間で内容が一定程度拘束されるなど,法的効力が認められることから,制限を加えたものです。

 

○相続法規の修正に関する事項
1.推定相続人の廃除(民法893)
2.推定相続人の廃除の取消し(民法894)
3.相続分の指定及び第三者への指定の委託(民法902)
4.遺産の分割の方法の指定または委託及び遺産の分割の禁止(民法908)
5.共同相続人間の担保責任に関する別段の定め(民法914)
6.遺贈の減殺の割合に関する別段の定め(民法1034)

 

○遺産の処分に関する事項
1.一般社団法人設立の意思表示(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
2.遺言信託(信託法3条2号)
3.遺贈(民法964)

 

○身分上の事項
1.認知(民法781条2項)
2.未成年後見人の指定(民法839)
3.未成年後見監督人の指定(民法848)

 

○遺言執行に関する事項
1.遺言執行者の指定(民法1006)

 

○その他の事項
1.祭祀に関する権利の承継(民法897)
(通説では,生前行為でも遺言でもよいとされております。)
2.保険金受取人の変更(保険法44・73)
3.相続欠格の宥恕(規定なし)
明文の規定はありませんが,多数説は,これを認めています。また,要式も定められておりませんので,例えば,相続欠格者に該当することを知りつつ,その者に遺贈などする行為は宥恕がなされたと評価され得る事項となります。
4.知的財産権の放棄(特許法97条・商標法35条等)
5.著作権法116条2項・3項

遺言執行者

遺言執行者とは,遺言に書かれた内容を実現する人です。絶対的に遺言において定めなければならないものではありませんが,遺言における認知及び推定相続人の廃除やその取消しは,遺言執行者によってなされなければなりません。そして,遺言執行者は,遺言で定めることもできますし,定めていない場合は家庭裁判所において選任してもらうこととなります。

 

遺言執行者は,遺言の実現者です。できれば生前において信頼のおける専門家などに依頼して遺言書に記載しておけばより安心・安全だと考えられます。得てして,相続は争続とも言われており,相続人間の利益・利害が衝突する場面もあります。

 

遺言執行者でなければならない職務は限られておりますが,相続人全員の協力が得られない場合も考えられ,このような場合には,遺言内容を信頼のおける第三者の立場から忠実,公平に遂行してもらえる遺言執行者を決めておくことは大切なことかもしれません。

 

 

(1)遺言執行者の任務

 

遺言執行者は,相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し,相続人の代理人とみなすと規定されています。

 

そして,遺言執行者がある場合には,相続人は,相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(民法1013)と規定されており,判例では,遺言執行者がある場合,相続人が相続財産につきした処分行為は絶対無効であると判示しております(大判昭5.6.16 民集9−550)。

 

遺言執行者は,遅滞なく,相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければなりません(民法1011)。

 

 

(2)遺言執行者が遺言で指定されていない場合

 

家庭裁判所は,利害関係人の請求により遺言執行者を選任できます。

 

※利害関係人とは,相続人や遺言者の債権者,遺贈を受けた者が該当します。

 

 

(3)家庭裁判所に申立てをする際の添付書類
1.遺言者の死亡の記載のある除籍謄本
2.遺言執行者候補者の住民票
3.遺言書の写し又は遺言書の検認調書謄本の写し(※公正証書遺言以外の遺言の場合,家庭裁判所において検認の手続きが必要となります。そして,検認を受けない遺言書で遺言を執行したり,裁判所外で開封した場合には5万円以下の過料に処せられます。)
4.利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)
5.遺言書1通につき収入印紙800円と予納郵券(裁判所によって金額は異なる)が必要

 

 

(4)遺言執行者の義務

 

遺言執行者は,委任の多くの規定が準用されております(民法1012条2項)。

 

また,「遺言執行者がある場合においては,特定不動産の受遺者から遺言の執行として目的不動産の所有権移転登記手続きを求める訴えの被告適格を有する者は,遺言執行者に限られ,相続人はその適格を有しない(最判昭43.5.31 民集22−5−1137)」という最高裁判決があります。

 

一方で,「特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言により,その者が被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得した場合には,その者が単独でその旨の所有権移転登記手続きをすることができ,遺言執行者は,遺言の執行として右の登記手続きをする義務を負うものではない(最判平7.1.24)という判例もあるところです。

 

 

(5)具体的な活動
1.遺言執行者に就任した旨の通知を出す。
2.財産目録を調製の上,相続人に交付する。
3.遺言に従って銀行や郵便局へ行き,遺言執行者として預金・貯金について払戻し手続き,あるいは名義人変更の手続きを行う。
4.遺言で不動産売却の条項があれば,売却手続きを実施する。
5.遺言内容に従い不動産の名義変更をする。
6.ゴルフ会員権,株券等有価証券の名義変更をする。
7.受遺者への引渡し。
8.認知に関する条項があれば届出を行う(就職から10日以内)。
9.廃除条項があれば,家庭裁判所に廃除の請求を行う。

相続法(民法)の改正で,自筆証書遺言が増加する?

これまで,公正証書で遺言を作成するメリットとしては,その遺言が発効した後に,家庭裁判所での「検認」の手続きをとらなくても,例えば,相続による不動産の名義変更ができておりました。 
一方の自筆証書の遺言の場合には,家庭裁判所で「検認」の手続きを経て,検認済みの証明書を遺言書に綴ってもらって,それを利用していたのが現状でした。
公正証書の場合は,この「検認」の手続きを省くことができる結果,直ぐに登記ができておりましたが,自筆証書遺言の場合には,上記のとおり「検認」の手続きを踏まなければならず,1か月以上(検認手続きに時間が掛かるため)かかってようやく登記の名義変更ができる状態になっておりました(遺された相続人も大変でした)。
さらに,自筆証書の場合,要件を満たしているか等の懸念もあり(自分一人で遺言ができる反面),また,遺言書で遺す遺産がたくさんあると,それらを全部,自筆で書くことが大変であることもあって敬遠する方もいましたが,これからは,財産目録のコピー(通帳のコピーを合綴できたり,パソコンでも作成もできる)でも構わず,その遺言書を法務局で預かってくれるため(預かる前の事前段階で,要件クリアーを確認できる),自筆証書の遺言が増えるのことが想定されます。
要件が大きく緩和されたため,自筆証書遺言もメリットが大きくなるでしょう。

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