債務整理,任意整理,過払い,千葉簡裁,司法書士

特定調停の選択基準

  1. 借りてからの期間が長期間である。
  2. 借金総額がそう多くはない。
  3. 債権者数が概ね5〜10社程度である。
  4. 債務者が,比較的収入が多く,仕事も安定している。
  5. まとまった返済原資が用意できる。
  6. 自営業者が営業を継続しながら借金を整理する。
  7. 債務者が不動産等の財産を所有している。
  8. 免責不許可事由が著しく大きく破産の選択が困難である。
  9. 本人がある程度,過去の取引を把握している。

特定調停の概要

1 特定調停法2条1項

 

特定債務者とは・・・@金銭債務を負っている者,A支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの,Bまたは債務超過に陥るおそれのある法人をいう。

 

※個人,法人を問わず要件に合致すれば申立て資格があるが,債権者申立てはない。
※借入先が1社であっても,上記に該当すれば可能。
※相手方が一部の債権者だけの申立ても認められる。
しかし,この場合に,一部債権者を除くことにより,公正・平等な解決が図られるか問題点が残ります。

 

2 多数債権者がいる場合の処理

 

民事調停法3条によれば,調停申立ての管轄は,「相手方の住所,居所,営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。」との規定があるが,特定調停法4条により一括処理が可能です。

 

3 民事執行手続の停止(特定調停法7条)

 

特定調停が係属した裁判所(特定調停の申立後)が,特定債務者の財産に対して実行されている執行手続きの停止を求める制度です。実務上は,特定調停の申立てと同時にこの民事執行停止の申立てを行う(特定調停の申立てに先行して執行停止の申立てはできない)。

 

《立担保》
1. 判断基準
民事調停規則では,執行停止を命ずる場合,必ず債務者に対して担保を立てさせますが(民事調停規則6条1項),特定調停では担保提供の資力のない債務者に も経済的再生の途が広く開かれるように,裁判所は裁量により担保不要で執行停止を命ずることができる建前となっています。
2. 実務の運用 1. 無担保で命じられた例は極めて少ないですが,以下の例が報告されています。 a. 他の債権者を出し抜いて債権回収を図ろうとして,債務者からの債務整理の通知を受けた直後に,公正証書に基づき給与債権を差押えた事例
b. ほとんどの債権者が任意整理や特定調停に応じる旨の意向を示しているのに,事前交渉を強硬に拒絶し,公正証書による給与債権の差押の申立てをした事例

 

2. 執行停止の効果
執行命令を得た後,停止命令正本を執行機関に提出すれば,当該執行手続は特定調停終了までの間,一時的にその進行を停止します。
なお,この停止命令は,執行手続が当然に停止されるものでないことに注意しなければなりません。

 

 

4 調停前の措置命令

 

現状の変更または物の処分の禁止その他調停の内容たる事項の実現を不能にしまたは著しく困難ならしめる行為の排除であり,措置命令の対象者は事件の相手方並びに利害関係人です。

 

《実務》

 

実務では,特定の商工ローン業者と超高金利業者を対象者とする約束手形金・小切手の取立等の禁止を求めるものがほとんどです。

 

 

 

5 調停に代わる決定(民事調停法17条)

 

調停が成立する見込みのないときに,裁判所の職権で決定される。

 

≪意義≫

 

本条は,調停が成立する見込みがない場合において,事案により,調停裁判所に,調停の解決のために必要な決定をなし得る権限を認めた規定である。

 

立法趣旨は,「当事者の一方の頑固な恣意により,または僅かな意見の相違によって,調停が不成立に終わるならば,それまでの手続きは徒労に帰し,調停制度の実効を収められないことになる。

 

このような場合に,裁判所が調停条項に代わるものとして事件の解決のために必要な裁判をなし得る制度は,旧法から採用されており(鉱害調停を除き),この 裁判が抗告をもってのみ不服を申し立て得る強制解決の手段であることから,いわゆる調停制度における「伝家の宝刀」として運用されていた。

 

裁判所が従来の調停に経過に照らし,当事者双方のために衡平にかない,紛争解決のために適切妥当と考えるところを,このような裁判の形で明示することは, 事実上当事者に反省の機会を与え,これを機縁として紛争が終局的に解決される場合も多いと考えられるので,本法においてもこの制度を維持することとなった のである。」(最高裁民事局・逐条解説80頁)

 

≪要件≫
1. 裁判所が相当と認めるとき
2. 調停委員会の意見を聴いて
3. 当事者双方の衡平を考慮し
4. 一切の事情を見て
5. 当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で決定される。

 

 

 

6 調停不成立

 

調停申立ての「取下げ」ではなく,「調停不調」にしてもらう。=弁済のための努力の結果を残す。業者の中には,自分たちの都合のよい弁済案を押し付け, 「調停が不調になると元に戻るぞ。」と強引な和解案を飲ませようと脅迫まがいの言動をする業者も一部あるようですが,次の対処を行う。
1. 不調後の不当な取立てには何度でも行政処分を求める。
2. 業者から出た計算書を謄写請求して,残がなければ支払いを拒絶。
3. 再度の特定調停の申立て(その間にお金を貯める)。

 

無理な合意は絶対に避ける(弁済計画案以上の支出を強要される場合には,合意をするより不調の方がよいし,そもそも1回目より返済が困難である。さらに強制執行をうける虞がでてくる)。

特定調停のメリットとデメリット

特定調停のメリット

特定調停のデメリット

 

 

  1. 簡易裁判所で調停委員を介して業者と返済計画について交渉できる。

  2. 強制執行の停止手続の特則がある。



  3. 調停前の措置命令を利用できる。



  4. 本人でもできる(請求停止の効力が本人でも得られる)。



  5. 費用が低廉である。



  6. 期日管理と資料管理を裁判所が行うため管理が容易である。



  7. 保証人がいる場合,主債務者と同一の申立書で申立てが可能である。


 

 

 


  1. 申立書の作成と提出に時間と労力を要する。



  2. 仕事を休んで裁判所に行かなければならない。



  3. 任意整理と比較して和解内容が有利とはいえない。



  4. 将来利息について,特定調停の実務では,将来利息は原則としてつけないものの,銀行系金融機関における長期ローンや企業対企業の案件,担保付ローン,公正証書等がある場合では将来利息を付して調停が成立する場合もある。



  5. 遅延損害金について,未払いを想定すると,約定期日の翌日を起算日として合意成立までの遅延損害金が付加される。



  6. 支払期間が3ないし5年間の長期間に及ぶため,その間に失業や病気などで支払いが停止すると強制執行を受ける可能性がある。



  7. 支払い不能に陥った場合,再生や破産の手続に変更せざるを得ないため2重の手間がかかる。



  8. 過払金が発生している場合,特定調停手続内では難しいのが現状。


 

特定調停に関するQ&A

特定調停Q&A

 

1.手続を利用できる者や、債権者の数、債務総額に個人民事再生法のような制限や基準は設けられているのか?

 

会社更生法や個人民事再生法などのような申立てる者の制限や、債務総額の制限はありません。

 

つまり、債権者が例え一人でも、また、自然人か法人か、事業者か非事業者の区別なく申立てる事が可能です。

 

 

 

2.既に破産原因に至っているが、この様な者は特定調停の申立てはできないのでしょうか?

 

特 定債務者の定義を、法は定めてありますが(金銭債務を負っている者で、かつ、支払不能に陥るおそれのある者、若しくは、事業の継続に支障をきたすことな く弁済期にある債務を弁済することが困難である者、または、債務超過に陥るおそれのある法人)、これらの要件は、既に経済的に破綻している者を排除する趣 旨ではなく、その様な者も特定債務者に含めて申立てをすることができると解されています。

 

 

 

3.特定調停は債権者全員を相手に申立てしなければならないのでしょうか?

 

一部債権者のみを相手方として、特定調停を申立てることはできます。その者との間で「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容」の特定調停条項の合意ができれば、調停を成立させることができるのです。

 

逆 に、多数の債権者は合意に達しているのに、一部の債権者が全く応じない場合においても、その一部の債権者を除いても、「特定債務者の経済的再生に資する との観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容」の調停条項の合意があるならば、調停成立が可能となる場合も想定できます。

 

但し、一部の者のみを相手方として申立てても、他の債務関係も記載した関係権利者の一覧表を提出しなければなりません。

 

これは、関係権利者全員に対する債務の内容を把握しなければ、公正・妥当・経済的合理性といった内容の調停条項を定めることができないからです。

 

 

 

4.一部の債権者を相手方として特定調停が進行中であるが、相手方となっていない者も新たに加えて手続を続行したいのですが?

 

それまで相手方としていなかった債権者を、新たに追加する必要性も手続の途中で、でてくることもあります。

 

この場合、追加の申立てをすることができますし、相手方となっていなかった債権者から、進行中の特定調停手続に参加してくることもあります。

 

これらの場合、手続は、できる限り併合して行なわれることになります。

 

 

 

5.多数の債権者と、債務者に有利な和解が成立し、経済的危機から脱した場合も、残る債権者を相手に特定調停を申立てることはできるのでしょうか?

 

表面上は、特定債務者という要件を充たしておらず、申立てはできないのが原則でしょうが、しかし、多数の債権者と和解が成立したからといって、それだけで「特定債務者ではない」といい切ることはできません。

 

なぜなら、残る債権者との合意が成立しなければ、先に成立した和解条項に従った弁済をしていくことができず、このために、なお経済的危機から脱していない場合であれば、残る債権者を相手に特定調停を申立てることが可能であると考えられるからです。

 

 

 

6.一部債権者が調停案に反対している場合、同意している債権者との間で特定調停を成立させることができますか?

 

反対債権者が、特定債務者の経済的再生を阻害しない程の少額債権者の場合には、便宜的に反対債権者を除いて特定調停を成立させることも可能です。

 

しかし、反対債権者の債権額等、その同意が債務者の経済的再生に不可欠であるような場合には、特定調停を成立させることができません。

 

また、一部の債権者が、債務者が破産という道を辿ろうが気にせず、強靭に反対し、執行や破産の申立て等の権利行使をしてくる場合には、債務者の経済的再生を図ることが困難な場合にあたると思われます。

 

この場合は、民事再生法などの利用も考慮する必要があります。

 

 

 

6.債権者に対し、過払金の返還を目的として特定調停を申立てることが可能ですか?

 

「調 停委員会は、特定調停のために特に必要があると認める時は、当事者または参加人に対し、事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。」 と規定されていることから、これにより債権者から取引経過を開示させて、過払金の返還を求めようとすることがあります。

 

しかし、法は本来、 そのようなことは予定しておらず、それのみを目的に特定調停を申立てるのは、難しいと思いますが、多重債務者はその様な債務ばかりでは なく、利息制限法に引き直してみても、債務が残るものもありますので、その様な過払債務と残額のでる債務の混合した債権債務関係の中で申立てる場合は、可 能であるといえます。

 

この場合実務では、調停委員によって、別期日に過払金調整の調停期日を設けてくれたりする例もあります。

 

もっとも、債務者の方は、取引経過の記録等を最初の取引から全てを保持されている方は少なく、過払金の有無などは調停を申立てて、相手方提出の資料を見るまではその存在すら判らないのが現状ですので、過払金の返還のみを考えている債務者はそう多くはいないと思います。

 

 

 

7.国税、地方税、社会保険料などの租税債権について、特定調停を申立てることはできるのでしょうか?

 

特定調停は、あくまで民事調停の特例であり、民事調停は「民事に関する紛争」を対象としていますので、租税債権等の公債権は特定調停の対象とすることはできません。

 

同様に、執行の停止手続等も、租税債権には及びませんので、滞納処分の停止を命じることはありません。

 

 

 

8.特定調停の申立てについての必要書類は何がありますか?
1.まず,特定調停申立書,債務一覧表(関係権利者一覧表),財産状況等明細書,家計収支一覧表が必要となります(定型書式は,裁判所でもらえます)。
2.宛名シール(申立人の住所・氏名(2枚)と債権者の住所・名称(1枚)を書いたラベルシール)
3.添付資料として,@申立前直近3ヶ月分の給与明細書,自営業者は確定申告書(いずれも写し),A業者との契約書,請求書,利用明細書等の契約の時期や残高の分かる資料(写し),B不動産を所有していれば登記事項証明書,C住宅ローンがある場合には,住宅ローンの償還表
4.収入印紙
5.郵便切手

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