株式会社設立登記
会社法の施行により,資本金額は,1円以上であれば株式会社の設立登記を行うことができるようになりました。
簡単に,法令上の設立手続きの流れは,
@ 定款の作成,定款認証及び根本規則の決定
A 資本金の払い込み
B 役員の選任・選定
C 設立登記
株式会社の設立登記自体は,インターネットが普及したお陰で,ひな形を入手することは容易なことですが,会社を経営するということは,色々な法的問題に直面するといっても過言ではありません。
司法書士は,登記全般についての専門家であり,手続法規である登記法以外にも実体法である法令にも精通しています。
当事務所では,設立のご依頼をいただいた会社様に対しては,その後の会社運営における法的課題についても,積極的にご相談を受けており,登記が終わったから,「はい さよなら」ではなく,会社の成長を見守ることも大切な業務であると考えております。
中小企業では,社内に独自の法務部門を置くようなことは,ほとんどないと思いますが,法務部門の役割が当事務所で果たす役割についても検討してみてはいかがでしょうか。
債権の回収であったり,各契約関係書類,雇用の問題,銀行融資を受ける際の抵当権設定やその抹消手続きなど,会社設立後に日常ではない出来事が多くあります。
設立登記は,諸準備も含めて自身で行うこともできますし,料金を比較して依頼先を決めることも自由にできますが,設立後も,頼りにできる存在であり続けられる専門家なのかも,十分に検討していただきたいと思います。
例えば,会社設立後,役員変更は2年ないしは10年後には必ず行う必要があります。また,本店を移転したり,定款の内容を変更することもあります。
これらを最初から同じ司法書士に頼んでいれば,いちいち定款のコピーを送ったりしなくても,資料は,司法書士の方で保存しているわけですから,スムーズに社長のやりたいことが実行に移せます。
企業は,収益を上げてなんぼの世界です。
登記のことで時間や頭を使うのであれば,業績アップのために多くの時間を掛けてみてはいかがでしょうか。
(1)株式会社の設立費用や時間が節約できます。
司法書士に株式会社の設立登記を依頼した場合,ご依頼者様が,実際に行っていただく作業は次のとおりです。
・ 会社の根本規則を定める。
・ 印鑑証明書を,役所にとりに行く。
・ 会社代表印を作成する。
・ 銀行に出資金を振り込む。
いかがでしょか?
会社の規則を定めることは自宅でもできますし,会社の代表印(会社実印)の作成や,銀行振り込みも,インターネットで全て自宅で行えます。
少なくとも,印鑑証明書だけは足を運ばなければなりませんが,基本的には,これだけの作業で,後は,司法書士の方で全て段取りを行います。
次に,費用の点ですが,電子定款で定款の作成をしますので,会社設立の実費(4万円 収入印紙)が節約できます。
ご自身でも,電子定款を作成することはできますが,機器の準備に結局は費用が掛かってしまいます。浮いた4万円を司法書士報酬の一部とすれば,ご自身で面倒な手続きに頭を悩ませることはなくなります。
株式会社設立登記費用の実費 |
|||
項 目 |
ご自身で行う場合 |
司法書士が行う場合 |
差 額 |
定款認証 |
約90,000円 |
約50,000円 |
−40,000円 |
登録免許税 |
150,000円 |
150,000円 |
0円 |
合 計 |
約240,000円 |
約200,000円 |
−40,000円 |
※ 約となっているのは,定款の枚数によって,定款謄本費用が変わるためです。
※ 株式会社設立登記の登録免許税の額は,資本金の額の1000分の7ですが,この額が15万円に満たない場合は15万円となりますので,株式会社設立登記の場合の登録免許税の最低額はこの15万円ということになります。
例) 資本金が300万円の場合
300万円÷1000×7=2万1000円
15万円≧2万1000円 ですので,15万円が登録免許税となります。
(2)司法書士は,会社法,登記関係のスペシャリストです。
司法書士は,会社法や登記法に精通した専門家です。会社設立をよりスムーズに,そして,より正確に行うことが可能です。
また,会社設立後においても,会社経営で法的課題を抱えた際の,頼もしいパートナーにもなれます。
取締役が1名いれば,株式会社は設立できるため,法人成りが以前よりも容易になりました。
また,類似商号といって,「同市町村内に同一の営業のために同一の商号を登記できない。」という規定が廃止され,会社法では,「同一の所在場所で同一の商号の登記はできない。」という規定になりました。
同一商号を使用できない範囲が随分と狭まったのですが,一方で,「不正の目的をもって,他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用してはならない」ことになりましたし,「違反するおそれのある商号の使用によって営業上の利益を侵害され,または侵害されるおそれのある会社は,その営業上の利益を侵害する者または侵害するおそれがある者に対して,その侵害の停止または予防を請求する」ことも可能になっています。
さらに,不正競争防止法の差し止め請求は,会社法のような「不正の目的」であるか否かを問わず,故意や過失も要件になっていないため注意が必要です。
このように1人で株式会社を設立することが可能にはなりましたが,商号一つをとってみても,検討しなければならないことは多くあるのです。
株式会社設立の手順をみていきましょう。
まず,株式会社の設立日は,いつになるのでしょうか。
自然人でいうと誕生日がこれに該当します。
自然人が生まれる日は,出産予定日などからおおよそ予想ができたりしますが,100%自分の意思で決めることができない方が多いと思います。
しかし,会社の誕生日(設立日)は,自分で決めることができます。
法人の誕生日(設立日)は,登記申請が受理された日となりますので,つまり自分で自由に決めることができます(しかし,法務局の休日(土日祝日,年末年始)には,申請が受け付けられないため,その日にすることはできません)。
(1)最低限度決めるべき事項
@商号
ローマ字(大文字・小文字),アラビア数字,アンパサンド(&),アポストロフィ(‘),コンマ(,),ハイフン(-),ピリオド(.),中点(・),ローマ字を複数用いる場合にはスペース(空白)を使用することができます。
A本店
会社の住所になるものですが,定款では最小行政単位(千葉県習志野市・千葉市・東京都港区等)まで決めておけばよろしいです。定款で,何丁目何番地まで決めておいても問題ありませんが,他へ移転する場合,その度に定款変更が必要になってしまいます。
会社設立当時,個人の自宅を本店とする方も多いと思いますが,印鑑証明書に,例えば「千葉県習志野市津田沼五丁目12番12号〇〇団地〇号棟101」とある場合,そのまま本店としても構いませんし,〇〇団地以下を省略することもできます。
B目的
会社は,この目的の範囲内で活動ができますが,目的に入っているからといってその全ての業務を行わなければならない,ということではありません。
許認可が必要な業種であれば,その目的が入っていないと許可や認可を受けられませんが,例えば,飲食店の経営と目的に記載しても,必ずしも飲食店を開店させなければならないものではないのです。
少なすぎても,後で目的を追加する際には定款変更が必要になりますし,多すぎても,銀行融資の関係で,何をやっているか会社か分からず敬遠される可能性もあるため,少なすぎず,多すぎずといった感じで,本業とのバランスをとることも大切です。
C資本金の額
資本金の額は,対外的な会社の信用力にも関わってきます。
1円の資本金の会社と500万円の資本金の会社とでは,どちらの方が信用力があるかは歴然ですし,銀行融資を受ける際にも,資本金の額はチェックポイントになります。
また,1000万円未満ですと,最大で2年間は消費税を納めなくてもよいので,この変更も考慮して決める必要があります。なお,許認可を要する事業の場合,許認可の要件が資本金の額にも係る場合がありますので,この辺りも調べてから決定する必要があります。
D取締役等の機関
ア 非取締役会設置会社
小規模な会社では,大きな会社と比較すると外部からの監視の必要は少なくなります。
この場合の機関としては,
株主総会 + 取締役 となります。
所有と経営があまり分離されていない会社が多く,新しく設立される中小企業の多くは,このパターンとなります。
また,このパターンでは,非公開会社(株式譲渡制限がある会社)となります。
なお,監査役を設置しても構いません。
イ 取締役会設置会社
取締役会を設置すると,株主総会の決議事項の一部が取締役会に一任され,株主総会の決議事項が,法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限定されるようになります。
また,経営を監視するため,監査役を置かなくてはなりません。
この場合の機関としては。
株主総会 + 取締役会 + 監査役
なり,このスタイルが,会社法施行前の一般的な形でした。
取締役会を構成するには,最低3名の取締役が必要です。
なお,非公開会社では,監査役に代えて会計参与を置いても取締役会設置会社を設立することができます。
E事業年度
会社は,1年以内の期間であれば,一事業年度をいつからにしても構いません。
大企業のように,4月1日〜翌年3月31日までとする必要はありません(この場合,決算月は3月ということになります)。
10月1日〜翌年9月30日でも構いません(この場合9月が決済月)。
もっとも,最初の定款で決算期を定めても,後日,定款を変更して事業年度を変更することは可能です(税務署への届け出は必要となります)。
決算した月の2か月後には,法人税や消費税などの税金を確定申告して納付しなければなりませんし,決済の月の8か月後には,税金の中間申告もあります。
このため,納付する月は,当然のことながら売り上げが少ない月や,仕入れの多い支払月に被らないにしないと,納税と重なり資金繰りが大変厳しい月になってしまいますので,この辺を想定できるのであれば,よく考えて決算月を決めるとよいでしょう。
(2)会社の基本事項が決定し,定款を作成したら,公証役場で定款の認証を受けることになります。
司法書士が代理人として,公証役場との打ち合わせから手続きまで行いますので,発起人の方が公証役場に行く必要はありません。
上記で,司法書士に頼むメリットにもあるとおり,当事務所は電子定款で定款を作成して認証を受けるので,定款に貼る4万円の収入印紙代を節約することができます。
(3)出資金の払い込みを行う。
金融機関に出資金の払い込みをするのですが,使用する口座は,発起人個人の口座になります。
新たに作成する必要はなく,普段使っている金融機関の口座でも大丈夫です(一部外国銀行等は除く)。
この段階では,会社はまだ誕生していないため,会社名義の銀行口座を作ることができず,個人口座しか使用することができません。
発起人の口座に出資金を払い込む方法ですが,発起人名義の口座に,その発起人が出資金を払い込む場合,単に,ATM等で出資金相当額を入金すれば足ります。
わざわざ,通帳に個人名が記帳されるように,振込手数料をかけて自分の口座に振り込む必要はありません。
しかし,単に,口座の出資金相当額の残高があるだけでは,それは払込みとはいえませんので,その場合には,一旦,払い戻しをして,出資金相当額を入金すればよいのです。
出金して・・・入金して・・・,なんだか,結局残高に変化がなく,おかしなことをやっているな,と感じる方もいると思いますが,形式的にも出資金を払い込む作業が必要です。
振込みの口座名義について,法務省民事局長より次の通達が発せられています(平成29年3月17日法務省民商第41号)。
「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の一部として払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを添付する場合における当該預金通帳の口座名義人の範囲について」
1 預金通帳の口座名義人として認められる者の範囲
預金通帳の口座名義人は,発起人のほか,設立時取締役(設立時代表取締役である者を含む。以下同じ。)であっても差し支えない。
払込みがあったことを証する書面として,設立時取締役が口座名義人である預金通帳の写しを合綴したものが添付されている場合には,発起人が当該設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面を併せて添付することを要する。
2 発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合の特例
登記の申請書の添付書面の記載から,発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していないことが明らかである場合には,預金通帳の口座名義人は,発起人及び設立時取締役以外の者であっても差し支えない。
払込みがあったことを証する書面として,発起人及び設立時取締役以外の者が口座名義人である預金通帳の写しを合綴したものが添付されている場合には,発起人が当該発起人及び設立時取締役以外の者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面を併せて添付することを要する。
3 発起人からの払込金の受領権限の委任
1及び2の場合における発起人からの払込金の受領権限の委任については,発起人全員又は発起人の過半数で決する必要はなく,発起人のうち一人からの委任があれば足りる。
(4)管轄法務局にて株式会社設立登記申請をする。
本店所在地を管轄する法務局へ,設立登記申請書を作成して申請します。
この際,印鑑届も一緒に行う方がよいでしょう。
印鑑届とは,個人でいうところの実印を役所に登録するものの法人のバージョンです。
法人の実印を法務局に登録することにより,法人成立後は,法人の印鑑証明書は法務局で取得することになります。
法人印鑑証明書の取得は,個人の印鑑証明書と同じように,「印鑑カード」で簡単に取得することが可能です。 法人の印鑑カードは,印鑑カード交付申請書を法務局に提出して発行してもらうことになります。
会社設立登記のご依頼にあたり必要となる主なもの
(1)本人確認ができる身分証明書(運転免許証等)
会社設立のご依頼をいただく場合,本人確認が義務付けられておりますので,ご協力をお願いいたします。
(2)印鑑証明書
発起人(出資される方)は2通,発起人以外の役員(取締役等)は1通のご取得をお願いいたします。
(3)実印
基本的に,会社設立に関する書類は,全て当事務所で作成しますので,その書類に押印をお願いいたします。
(4)発起人の銀行通帳
これまでお話ししましたとおり,既存の通帳でも,新規で開設された通帳でも構いません。
(5)会社実印(法務局へ届け出る印鑑)
サイズなど規定がありますが,通常のハンコ屋さんで頼めば,規格に合ったものを作成してもらえます。