「司法書士法の一部を改正する法律」(平成14年法律第33号)が平成14年(2002年)4月24日に成立し,同年5月7日に公布,平成15年4月1日に施行されました。ここでは,司法書士法第3条(業務)のうち,簡裁訴訟代理関係業務について説明します。
第3条 (業務)
司法書士は,この法律に定めるところにより,他人の依頼を受けて,次に掲げる事務を行うことを業とする。
1. 登記又は供託に関する手続について代理すること。
2. 法務局又は地方法務局に提出する書類を作成すること。
3. 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
4. 裁判所又は検察庁に提出する書類を作成すること。
5. 前各号の事務について相談に応ずること。
6. 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし,上訴の提起,再審及び強制執行に関する事項については,代理することができない。 1. 民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であって,訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和22年法律第59号)第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
2. 民事訴訟法第275条の規定による和解の手続又は同法第7編の規定による支払督促の手続であって,請求の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
3. 民事訴訟法第2編第3章第7節の規定による訴え提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第91号)の規定による手続であって,本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
4. 民事調停法(昭和26年法律第222号)の規定による手続であって,調停を求める事項の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
7. 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であって紛争の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて,相談に応じ,又は裁判外の和解について代理すること。
2,前項第6号及び第7号に規定する業務(以下「簡裁訴訟代理関係業務」という。)は,次のいずれにも該当する司法書士に限り,行うことができる。
1. 簡裁訴訟代理関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
2. 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
3. 司法書士会の会員であること。
3〜5(略)
6,第2項に規定する司法書士は,民事訴訟法第54条第1項本文(民事保全法第7条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず,第1項第6号イからハまでに掲げる手続における訴訟代理人となることができる。
(以下略)
第2項の簡裁訴訟関係業務を行うにはまず,上記要件をクリアーしなければならない。そこで,第1回司法書士特別研修は,平成15年4月26日から始まり同年6月1日の午前中までの100時間の研修を終え,同日午後2時から認定考査が行われました。
考査問題の内容は,「事実認定の手法に関する能力,立証活動に関する能力,弁論及び尋問技術に関する能力,訴訟代理人としての倫理に関する能力その他簡裁訴訟代理関係業務を行うのに必要な能力を問うもの」となっております。
第1 民事訴訟法上の訴訟手続に附随する手続のうち,司法書士が行えるもの
1 第1審の訴訟手続(簡易裁判所)
管轄指定の申立て
管轄違いの場合における移送の申立て
遅滞を避けるための移送の申立て
簡易裁判所の裁量移送の申立て
必要的移送申立て
裁判官に対する除斥,忌避の申立て
裁判所書記官に対する除斥,忌避の申立て
選定当事者の選定
特別代理人選任の申立て
同時審判も申出
補助参加の申出と,補助参加についての異議
独立当事者参加
訴訟脱退
権利,義務承継人の訴訟引き受けの申立て
共同訴訟参加の申出
訴訟告知
許可代理の申立て
補佐人の許可の申立て
法定代理人等に対する費用償還決定の申立て
訴訟費用額確定処分の申立て
裁判所書記官の処分に対する異議の申立て
和解の場合の費用額等確定処分の申立て
訴訟が裁判及び和解によらないで完結した場合等における訴訟費用負担決定,訴訟費用額確定処分の申立て
費用額の確定処分の更正処分の申立て
更正処分に対する異議の申立て
担保提供命令の申立て
担保の取消決定の申立て
担保の変換の申立て
救助付与,救助取消し及び費用支払決定の申立て
弁護士又は執行官による訴訟費用負担決定又は訴訟費用額確定処分の申立て
訴訟記録の閲覧請求,閲覧等の制限,閲覧等の制限決定取消しの申立て
期日指定の申立て
公示送達の申立て
裁判所書記官の処分に対する異議の申立て
訴訟手続の受継の申立て
訴えの変更
選定者に係る請求の追加
反訴の提起
求問権の行使
訴訟指揮等に対する異議
口頭弁論の併合等の場合における尋問の申出
時機の後れた攻撃防御方法却下の申立て
口頭弁論調書の記載についての異議
当事者照会
準備的口頭弁論終了等後の攻撃防御方法の提出についての説明の求め
証拠の申出
尋問の順序の変更についての異議
当事者本人尋問の申立て
鑑定人忌避の申立て
文書提出命令,文書送付嘱託の申立て
検証目的提示命令の申立て
訴え提起後の証拠保全の申立て
口頭弁論における再尋問の申出
当事者の一方が口頭弁論期日に出頭しない場合等における終局判決についての申出
口頭弁論の更新における再尋問の申出
更正決定の申立て
訴訟費用負担の裁判を脱漏した場合における訴訟費用負担決定の申立て
仮執行宣言,仮執行免脱宣言の申立て
仮執行宣言の脱漏の場合における補充の決定の申立て
訴えの取下げ
裁判所等が定める和解条項の共同申立て
請求の放棄,認諾
地方裁判所の管轄に属する事件についての反訴の提起に基づく移送の申立て
起訴前和解の申立て
2 少額訴訟
少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述
通常の手続に移行させる旨の申述
少額訴訟判決に対する異議の申立て
3 督促手続
申立ての却下処分に対する異議の申立て
督促異議の申立て
更正処分,更正処分に対する異議の申立て
仮執行宣言の申立て
仮執行宣言の申立ての却下処分に対する異議の申立て
4 手形,小切手訴訟
手形,小切手訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述
通常の手続に移行させる旨の申述
手形,小切手訴訟の判決に対する異議の申立て
異議の取下げ
第2 民事保全法上の保全手続に附随する手続のうち,司法書士が行えるもの
保全命令に関する手続
1 債権者の申立てによるもの
各保全命令事件(不動産,債権,動産,自動車,ゴルフ会員権,動産引渡請求権,預託株券等持分等の仮差押命令申立て,占有移転禁止の仮処分,処分禁止の仮処分命令の申立て等)
保全命令の申立ての取下げ
担保取消決定の申立て
担保取戻しの許可の申立て
担保変換の申立て
更正決定の申立て
2 債務者の申立てによるもの
保全異議の申立て
仮処分命令を取り消す決定における原状回復の申立て
保全異議の申立ての取下げ
起訴命令の申立て
保全取消しの申立て
解放金供託による保全執行の取消しの申立て
3 債権者,債務者の申立てによるもの
事件記録の閲覧等の請求
移送の申立て
保全異議事件における移送の申立て
第3 民事調停法上の手続に附随する手続のうち,司法書士が行えるもの
調停前の措置の申立て
調停に代わる決定に対する異議の申立て
特定調停の申立ても当然含まれる
司法書士法第3条1項5号では,次のように規定されています。
前各号の事務について相談に応ずること。
前各号とは?
1号 登記又は供託に関する手続について代理すること。
2号 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
3号 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
4号 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節 の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
司法書士法第3条1項7号
民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
具体例として,貸金請求を考えてみます。
よくある相談として,
「貸したお金を返してほしいのですが・・・」
司法書士:事情を聞き取った後,貸金返還請求訴訟を提起する前に,保全処分(仮差押)をした方がよいと判断した。
【7号相談の場合】
この場合,依頼者に,仮差押が必要であるとの認識がなくても,7号相談であれば,依頼者に対し,仮差押をする必要を告げ,仮差押の手続を本訴の前にするよう勧めることができる。
【5号相談の場合】
依頼者に対し,相手が唯一の財産である不動産を手放してしまったら,本訴で勝訴しても貸金の返還を受けることができない危険がある場合があることを話し,本訴で勝訴しても,相手に財産が何もなければ貸金の回収は困難であることを説明する。
その上で,そのような未回収を防ぐ方法の一つとして,仮差押手続があることを説明して,実際に仮差押をするか否かは,依頼者が判断することになる。
【違いのまとめ】
司法書士に代理権がある場合は,紛争解決のため,依頼者にとって最良と判断される手続等を判断して,提示と助言ができるのに対し,代理権がない場合(書類作成援助),最良と思われる手続のみの情報提供ではなく,依頼者の依頼の趣旨にあうような適切な他の選択肢に対する情報も併せて提供し,依頼者が適切な判断を形成できるように援助し,依頼者の判断に従って書類を作成することとなる。
キーワード「紛争の目的の価額」
訴額で検討する。
訴額とは,訴訟の目的の価額である。
140万円の貸金返還請求
280万円の土地返還請求
上記は,難しくなく,単に,140万円の貸金ということで,訴訟の目的の価額は140万円であり,下は280万円の価額の土地明渡しである。
附帯請求というもの
100万円の貸金残金+遅延損害金50万円
附帯請求(利息や損害金)は,訴訟の目的の価額に算入しない。
訴額算定の事例
1 Xは,Y1に対し,140万円を貸付け,Y2が連帯保証した。
訴額140万円
2 Xは,Y1振出の額面140万円の約束手形を,Y2より手形の裏書譲渡を受けたが,満期に手形を呈示したところ,支払を拒絶された。
Y1及びY2を共同被告として,手形訴訟を提起した(請求140万円+満期以降の利息6%)
訴額140万円
3 Xは,Yに300万円を貸付け,その後,弁済をしたところ,後日,Xは,100万円が未払いであるとして,Yに対し,請求をしてきた。Yは,全部弁済したとして,債務不存在の提訴をした。
訴額100万円
3−1 上記を発展させて
Xは,100万円が未払いだとYに請求。Yは,未払いは60万円だと主張した場合は。
40万円 (支払いを免れる部分)
4 交通事故
自動車修理費 30万円
治療費 10万円
休業損害 10万円
通院慰謝料 10万円
司法書士報酬 6万円
上記に対する事故発生日から支払うまでの年5%の遅延損害金
66万円
4−1 交通事故(車対車の追突事故)
損害
@ 治療関係費 40万円
A 通院交通費 1万5000円
B 休業損害 30万円
C 入通院慰謝料 79万円
小計 150万5000円・・@
過失相殺率 0%
加害者の保険会社からの既払い金 71万5000円・・・A
(治療関係費+通院交通費+休業損害)
損害賠償請求額(@―A) 79万円
上記のように損害額が司法書士の代理権の範囲である140万円を超える場合であっても,加害者側の任意保険会社から治療費等が先に支払われる場合が多く,損害賠償請求時には,司法書士の代理権の範囲であることが数多くあります。
4−2 交通事故(直進車両と右折四輪車との事故)
@ 治療関係費 70万円
A 通院交通費 3万円
B 休業損害 40万円
C 入通院慰謝料 90万円
小計 203万円
過失相殺率 20%
過失相殺後の損害額 162万4000円・・@
加害者の保険会社からの既払い金 70万円・・・A
(治療関係費のみ)
損害賠償請求額(@―A) 92万4000円
上記のように損害額が司法書士の代理権の範囲である140万円を超える場合であっても,過失相殺がなされ,また前述のように加害者側の任意保険会社から治療費が先に支払われる場合が多く,損害賠償請求時には,司法書士の代理権の範囲であることが数多くあります。
4−3 交通事故(追突事故による格落ち損害請求)
@ 車両損害 80万円
A 代車代 12万円
B 格落ち(評価損) 24万円
合計 116万円
物損事故の場合,よほど大きな事故や高級車が関係する事故でない限り,司法書士の代理権の範囲であることが数多くあります。
【交通事故の総括】
人身事故の場合は,後遺障害が関係する事故でなければ,過失相殺や加害者側の任意保険会社からの内払い金があるため,最終的な請求額が司法書士の代理権の範囲を超えないことが多いと思料します。また,人身事故が自転車対自転車や自転車対歩行者(以下,「自転車事故」といいます。)の場合も比較的軽微な損害が多いのではないかと考えられます(自転車事故の場合は、加害者側が無保険であることが多く,賠償資力等の点で紛争性が高い。)。
物損事故の場合,特に争いとなるのは,「過失割合」「評価損」「全損時価」です。前述のように物損事故の損害額は,司法書士の代理権の範囲超えないものが多いのも現実です。
5 建物収去土地明渡請求
Xは,所有する土地に,無断で建物を建設して土地を不法に占有しているYに対し,所有権に基づき,建物収去土地明渡請求をしたい。この場合,訴額は。
前提として,建物の固定資産評価額500万円,土地は400万円とする。
100万円
所有権に基づく土地明渡の場合,土地価格の2分の1となる。
不動産の価額は,原則として固定資産評価額になるが,ただし,土地については当分の間,固定資産評価額に2分の1を乗じた額とされている(民事局長通知)。
所有権に基づく土地明渡請求は,建物収去など妨害排除請求と共になされることがある。この場合,妨害排除は,土地明渡しの手段方法にすぎず,訴額算定の対象とならない。
6 建物明渡
Xは,自己所有のアパート(200u)の1室(50u)を,賃料5万円で,Yに対し貸しているが,Yが,賃料を6か月分滞納しているため,契約を解除して,明け渡しと未払い賃料及び明渡しまでの賃料相当損害金の支払いを求めて訴えを提起したい。なお,アパート(建物)全体の価格を,1000万円とする。
XのYに対する請求のまとめ
@建物の明渡し
A6か月分の未払い賃料(30万円)
B解除後,明け渡しまでの賃料相当損害金(5万円×x)
125万円
この場合の計算式
1000万円÷200u×50u÷2=125万円
7 賃料増額確認
Xは,Yに対し,月額15万円で建物を賃貸しているが,近隣賃料と比較して低額であるため,Xは,平成25年1月1日以降の賃料を月額20万円としたい旨をYに対し賃料の増額を通知した。
しかし,Yが応じないため,Xは,平成25年4月1日に賃料増額確認を求めて提訴した。
75万円
この場合の計算式
賃料増額の額 5万円(20万円―15万円)
増額の始期から訴え提起までの期間 3か月(H25.1.1〜25.4.1)
一審の平均審理期間 12か月
以上より,5万円×(3か月+12か月)=75万円
8 抵当権抹消登記請求
Xは,Yから100万円を借り受けるにあたり,X所有の土地に抵当権を設定したが,その後,債務を弁済したが,抵当権抹消にYが応じない。
なお,土地の固定資産評価額は,1000万円とする。
100万円
担保物権の抹消登記請求は,実体上消滅した権利が形式上登記簿に残ることによって,原告の所有権を妨害していると考え,その状態を排除することを求める 請求であり,この場合は,目的物の価額の2分の1となる。
ただし,登記された被担保債権の額(100万円)が目的物の価額の2分の1に満たない場合は,その債権額が訴額となる。
1000万円÷2=500万円(目的物の価格)
500万円÷2=250万円
250万円>100万円
9 悪質商法
キャッチセールスで,180万円の宝石をクレジットで購入させられた。
クーリングオフの内容証明郵便は,代理人として出せるか?
支払い済みのクレジット代金100万円の既払い金返還を,信販会社に代理人として請求できるか?
【改正割賦販売法により,過剰与信防止義務及び支払可能見込額の調査義務により,高額の個別クレジットを組む例は減少傾向にあると思われる。】
10 労働問題
未払い賃金
解雇予告手当
未払い残業代
地位確認
セクハラ
不当解雇
11 傷害事件・軽犯罪法違反・不倫による損害賠償
12 保全手続
100万円の貸金返還請求訴訟をするため,保全する必要から200万円の固定資産評価額の不動産を仮差押する場合
13 140万円の貸金返還訴訟を受けており,被告代理人として,被告が原告に対して有する貸金債権(200万円)を自働債権として,相殺の抗弁を述べることができるか?
⇒ 自働債権(被告→原告)の存在や額について紛争性がなければ出来る。
債務整理における問題点
.「個別額説」と「総額説」
1.個別額説
貸金業者A社・B社・C社からの借入れがある甲が,債務整理を行う場合において,債権者ごとに価額を算定する説
2.総額説
上記例で,A社・B社・C社の合計債権額を「紛争の価額」とする説
.「受益額説」と「債権者主張額説」
1.受益額説
債務弁済協定調停や特定調停において用いられる紛争の価額とする説
例)@債務額500万円を3年後に一括弁済する場合の計算
500万円×0.05(非商人)×3年 = 75万円
2.債権額1000万円を,3年間で支払う場合の計算
(75万0417円)
3.債権者主張額説
上記例@で500万円を債権者が主張していることから,この500万円がそのまま紛争の価額とする説
「個別訴訟物説」と「合算説」
1.個別訴訟物説
貸金業者A社が,80万円の貸金残を主張していたところ,利息制限法に基づく再計算をしたところ,過払いが70万円であった場合,紛争の価額は70万円とする説
2.合算説
上記において,貸金業者主張の80万円と過払金の70万円の合算とする説
日本司法書士会連合会の考え方
1.「個別額説」「受益額説」「個別訴訟物説」をとる。
2.「訴訟の目的の価額」とは・・・
訴えで主張する利益によって算定する。この訴えで主張する利益とは,原告が全部勝訴の判決を受けたとすれば,その判決によって直接受ける利益を客観的かつ金銭的に評価して得た額である(注釈司法書士法)。
3.債務弁済協定調停及び特定調停について,調停を求める事項の価額となるのは,申立人が受ける経済的利益である。
この経済的利益は,残債務の額ではなく,残債務額の支払免除,支払猶予又は分割払い等の弁済計画の変更により,申立人(債務者)が受ける利益であると考えられる。(中略)
そのため,140万円を超える貸金債権についての債務弁済協定調停や特定調停の申立てであっても,残債務額の支払免除,支払猶予又は分割払い等の経済的利益が140万円を超えない場合には,司法書士は,これらの調停の申立てについて代理することができる(注釈司法書士法)。
4.裁判外和解について
多重債務者のいわゆる債務整理事件について司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲は,債務弁済協定調停事件や特定調停事件における代理権の範囲と同様の基準によって判断する。
したがって,「紛争の目的の価額」の算定には,残債務の額ではなく,弁済計画によって債務者が受ける経済的利益による。
また,複数の債権者との間で一つの和解契約をする場合には,当該複数債権者の債権額を合算して判断し,債権者ごとに各別の和解契約をする場合は,債権者ごとに各別に算定することになる(注釈司法書士法)。
書類作成(司法書士法第3条第1項4号) 1.裁判所又は検察庁に提出する書類を作成すること
1.裁判所とは
最高裁判所,高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所
2.事件の種類
民事事件のみならず,行政事件,刑事事件,家事事件,少年事件等の全ての事件
3.検察庁とは
最高検察庁,高等検察庁,地方検察庁及び区検察庁,検察審査会
4.提出する書類
例)控訴理由書・上告状・離婚調停申立書・遺産分割調停申立書・労働審判申立書等・告訴状,告発状,刑事確定記録の閲覧請求書等
?実際の対応
訴状作成依頼 → 打合せ → 現場 → 訴状の完成 → 裁判所へ提出 → 補正 → 第1回口頭弁論 ・・・ → 証拠調べ → 判決 → 控訴状 → 第1回口頭弁論 ・・・ → 結審 判決 → 差押命令申立書作成 → 裁判所へ提出
法第二十九条第一項第一号 の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
1号 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
2号 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
3号 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
4号 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律 (平成十八年法律第五十一号)第三十三条の二第一項 に規定する特定業務
5号 法第三条第一項第一号 から第五号 まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務
※ 同条1項8号
筆界特定の手続であって対象土地の価格として法務省令で定める方法により算出される額の合計額の2分の1に相当する額に筆界特定によって通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が140万円を超えないものについて,相談に応じ,又は代理すること。
《筆界特定の概要》
筆界特定制度とは,平成18年1月20日施行された「不動産登記法等の一部を改正する法律」に基づく改正である。これまで,筆界,すなわち公法上の土地の境界について争いが生じた場合,裁判所において境界確定訴訟を提起する以外解決方法がなかった。
しかし,この訴訟においては,当事者が自ら証拠資料を収集し裁判所に提出しなければならず当事者の負担が大きかったことと,隣人関係に悪影響を及ぼすことなどの問題点が指摘されていた。
そこで,これまで不動産の表示に関する登記を扱ってきた法務局において,筆界調査委員という外部専門家の関与を得た上で,登記官のうちから法務局または地方法務局の長が指定する筆界特定登記官が筆界を特定することとして,公法上の筆界は,私法上の所有権の範囲とは区別されて当事者間の合意で決定・変更することができるものではないため,行政レベルで適正かつ迅速に筆界を明らかにして筆界に関する紛争の早期解決を目指すべく創設された。
1.対象土地の価額について
申請日がその年の1月1日から3月31日までの期間内である場合には,その前年12月31日現在の課税台帳(固定資産課税台帳)に登録された額
申請日がその年の4月1日から12月31日までの期間内である場合には,その年の1月1日現在において登録された額
2.法務省令で定める割合=100分の5
3.具体的な計算例
甲土地と乙土地間の筆界特定の場合
甲・乙各土地の固定資産評価額を1000万円とした場合
2000万円×1/2×5/100=50万円
4.認定司法書士の限界は?
140万円÷5/100÷1/2=5600万円