一人会社(株主が社長一人)であっても、1年に1回以上、必ず株主総会を開催しなければなりません。そもそも株主総会とは、株式会社にとって会社の基本的事項についての意思決定をする機関なのです。
自然人(人間)は自己の意思に基づいて行動することができますが、法人(会社)は肉体がないためその意思決定に基づく行動は、株主総会の決議により定める必要があるのです。
また、会社は各事業年度の終了の日から2か月または3か月以内に確定した決算にもとづき法人税の申告をする必要があります。この前提となる決算を確定させるためには、定時株主総会において計算書類(貸借対照表、損益計算書、利益処分案または損失処理案)が決議承認されなければなりません。
さらに、役員(取締役、監査役)は任期が法律で定められているので、その場合は株主総会で選任しなければなりません。これを怠ると過料の対象になりますので注意して下さい。
公証役場に交付を請求するか、再作成するかで対処できます。
公証役場にて請求
認証を受けた公証役場で原始定款(会社設立時に作成した最初の定款)の謄本を交付請求することができます。但し、認証後20年を超えるものについては保存していない場合もありますので、公証役場にご確認ください。
定款謄本の請求をする場合の必要書類
1. 社長が手続をする場合 ? 会社の印鑑証明書と実印(代表印)
会社の資格証明書または会社登記簿謄本
2. 代理人が請求する場合 ? 会社の印鑑証明書と実印(代表印)
会社の資格証明書または会社登記簿謄本
代表印を押印した委任状
代理人の印鑑証明書と実印または運転免許証と認印
再作成する場合
設立後の定款の内容を変更している場合等については、最新の登記簿謄本を取得し、さらに過去の株主総会議事録や取締役会議事録を参照し、新たに定款を作成することができます。
それでも不明な点があれば、株主総会または社員総会(有限会社)の特別決議により定款を自由に変更再製することができます。
再製された定款は公証役場において認証を受ける必要はありませんが、諸官庁に提出する場合で必要があれば、私文書として認証を受けることができます。
取締役は「取締役会に出席して業務執行に関する意思決定に参加すること」や「代表取締役の業務行為を監督すること」などを怠って会社に対し損害を与えた場合の責任や、「取締役が会社の計算書類やその他の書類に事実と異なることを記載すること」、「虚偽の登記をすること」などによって第三者に損害を与えた場合、責任を負わなければなりません。
名前だけを貸したつもりでも基本的には取締役としての責任を負わなければならなくなる場合が発生します。取締役だけではなく監査役についても責任を問われることもあり得ると覚悟して対処してください。
取締役の報酬額の決定を取締役会または、代表取締役に無条件に一任するという株主総会の決議は無効となります。しかし、一任するのではなく、報酬額を計算できる基準を定め、その基準を株主に公開しているのであれば、その基準に従って報酬を支払う権限を取締役会に与えることはできます。この場合でも報酬全体の総額や上限を定款で定めておくか、株主総会で決議しておく必要があります。
法律では「取締役が受けるべき報酬は、定款に定めていないときは、株主総会の承認を要する」と定められています。取締役会や代表取締役に自らの報酬額の決定権限を無制限に許せば、いわゆるお手盛りとなる危険性があり適性な決定が期待できなるからです。
休業状態でも登記は必要となります。株式会社の場合、取締役・監査役には任期があり、同一の役員であっても登記をしなければなりません。これを怠って12年以上経過すると、「解散したもの」とみなされて登記官の職権による解散登記がされることがあります。
また営業をしなくても、決算期ごとに決算承認の株主総会や社員総会(有限会社)を開く必要があります。また税務署への申告も忘れないようにしてください。都道府県民税、市区町村民税、法人税に関しては休業届出等を提出しておく必要がありますし、雇用保険などについても廃止等の手続が必要な場合もありますので、諸官庁へ確認してください。
自己が取締役を勤めている会社に対し、高金利で金銭を貸し付けた場合を想定すると、取締役にとっては有利であり、会社にとっては不利益な取引といえます。取締役は、会社の業務執行に関して強大な権限を持っているため、その地位を利用して会社の犠牲のもと、自分自身や第三者の利益を図ることもないとは言えません。
そのような取引態様を利益相反取引といい、利益相反取引に該当する場合には取締役会の承認が必要になります。(有限会社では社員総会の承認)この取締役会では、利害関係のある取締役は会議に出席していても総会決議の出席者数の入らず、また利益相反取引の決議に関しては議決権がありません。
以上,日本司法書士会連合会編「会社の基本」ハンドブック参考
契約の意味をまず知っておくこと
契約とは当事者同志をお互いに約束事で結びつけることです。当事者が向き合う形で、一方が金を出し、他方が物を渡すという契約(売買契約など)であったり、当事者が皆一つの方向を向 いて協力して一つの事業を成功させるといった契約(組合契約など)もあります。
いずれにしても、契約というのは、当事者同志の権利義務の関係を定めて、各自がそれぞれ何をすべきかを明確にして、決められたことを守ることで、お互いを拘束し合うことです。
念書と契約書はどこが違うか
念書というのは、通常、一方当事者から、もう一方の当事者に交付されるもので、一方からの約束です。 約束という意味での、拘束力はあるのですが、念書に署名した者や、相手に提出した側の者だけが拘束されるという性格のものですから、一方的なことしかわかりません。契約のように、お互いが対等な立場で拘束し合うものではなく、一方的に約束するという性格の書面である点が、もっとも異なるところでしょう。
さらに、念書は通常極めて簡単に、事実関係や、債務の支払い方法などを約するものが多いので、「その念書を作成した」という事実の証明にはなっても、その契約自体が存在していた事実や、念書の事実がどうして生じたのか等、実質的な点は必ずしも十分には証明していません。証明力が極めて限定されている訳です。
従って、念書だけで裁判を起こそうと思っても、そう簡単ではなく、なかなか困難なものがあります。 この点、契約書ならば、合意の存在が書面と署名で確認されており、当事者の権利関係、利害関係、合意内容などがはっきり書面化されており、なぜその様な債務があるのか相当程度はっきりしますので、比較的有利に裁判をすることができるのです。
従って、裁判官も、契約書があると、安心して判断ができると言うことになります。逆に、契約書があるのに、これを否定しようする場合には、大変な困難があるということになります。こうした点でも、念書というのは、まったく異なった証明力になるという認識が大切です。
今述べたのは、実質的なことであり、例えば、単に債務者を欺くためにわざと表題は念書としており実質は金銭消費貸借契約書だったということもありますので、十分注意してください。
公正証書による契約書との違い
公正証書は、債務名義(執行証書)となるという点が、契約書とのもっとも大きな違いです。契約書だけでは、すぐに強制執行をすることはできません。一度裁判を起こして、勝訴判決を得て、その判決に、強制執行を認めるという趣旨の執行文というものをもらわない限り、強制執行をする力はありません。このように手間暇が掛かるので躊躇している方も多数います。
しかし、公正証書は、強制執行を受けることを前提に作成されますので、公正証書中に、強制執行を受けてもかまいませんという「執行受諾文言」の記載がなされます。この文言がないと通常の契約書のとおり勝訴判決が必要です。
債務者が、こうして、予め、債務不履行の時は強制執行を受けても文句は言いませんと約束し、公証人がそれが正当と認めたので判決の必要はなく公正証書の作成だけで、強制執行の効力が与えられます。
こうした強力なものですから、作成においても極めて厳格に行われます。従って、これが作られるのは、金銭消費貸借契約すなわち借金するとき、不動産売買や不動産を借りるときくらいのものです。
これらの場合は、危険度が高く、強制執行できるようにしておかないと、後で困ったことになることが多いからです。
また離婚の場合の財産分与や、養育費の支払など履行を確保しておきたい場合にも、実行力ある取り決めができるでしょう。
注意として、公正証書にすれば何でもかんでも直ぐに強制執行できるというものではありません。公正証書により債務名義となる要件は、「金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」について強制執行ができるということです。
この規定により、通常の金銭の支払を目的とするものは公正証書のメリットを生かすことができますが、不動産の明渡しや離婚する事、騒音を出さないなどの約束事はいくら公正証書にしても直ちに強制執行することはできません。
しかし、一般には契約は、友好的な、対等の関係で行われますので、公正証書を作るというのは、一般の契約書にはなかなかなじまないというのが実際です。
契約書には何を書くか
契約書を作ろうというときには、本当は弁護士や司法書士、行政書士に相談して、正確なものを作って欲しいのですが、いろいろな事情からそうも言っていられないようです。
そこで、自分で契約書を作るときの留意点を指摘しておきます。
その第一は、今から作ろうと思っている契約書の手本になるようなものを探して、よく読むことです。
古いものは、法律が変わっているかも知れませし、問題があるものも多々あります。できるだけ、新しいものを見るのが妥当です。条文がどの様になっているか、どんな書き方をしているか、何が必要な要件か、よく見るとわかってきます。
その上で、自分の事情に合うものはどれか、足りないことは何かと、見ていけばいいのです。文房具屋さんや、本屋さんで、契約書の雛形を売っていますので、一度見てください。
よくわからなかったら、あいまいにしないで、迷ったこと、必要と思ったことのすべてを、「特約」として何でも書いておくようにしましょう。
きっと後で役に立ちます。問題となるのは、この条文はこういう意味で書いたのです、とか、こういう約束があったのです、等と後から言う人がいます。こうしたことは、その契約書を作る時にはっきり書いておかなければ、書いていないのと全く同じことです。
契約書にこんなことを書いてはまずいのでは、とか、恥ずかしいのでは、等という余計な心配は全く必要ありません。疑問に思ったり、少しでも気になったこと、心配だと思った点などは、後日かならずと言っていいほど言った言わないの問題になります。
少しでも気になったら、何でも、どんなに小さなことでも結構です。契約書の特約の項目が一杯なら、欄外にでも、余白にでも書いておくことです。ともかく書いておいてください。契約の時のことは、契約書に書いてあることだけが真実で、書いてないことは、認めないのです。重要なものほど、書いてあるはずだ、書いていないのは重要ではないのだ、と後で言われるのです。
重要なことは誰でも書くのが普通だからです。重要なことを書くのは当然のこと、後日問題になるかと危惧を感じたら、些細なことでも書いておきましょう。十分な注意が必要です。
又同様に、契約書が、その条文の文言だけで、一人歩きをはじめてしまいますので、十分に気を付けてください。書面に書いたことは、絶対に変化しません。書面の通りの効果を持ちます。契約したときの人の気持ちは変化するものです。その事を念頭に、証拠として残さなければなりません。
契約書にはすべて記入者自身が自筆で記入すること。
これは当たり前のことですが、契約者が複数の時や、夫婦の時、連帯保証人の部分や、保証人の部分などは、なぜか皆さんいい加減にしています。当事者の一人の人がすべて勝手に記入して、良しとしています。
法的な観点では、考えられないことで、とんでもないことです。
その様な記入はほとんどの場合、無効になります。書いてないのと同じことになるのです。
また、委任状を作ってきたとしても、にわかには信じることはできません。裁判になっても、委任状の偽造と言うことになれば、偽造した人の責任は出てくるにしても、偽造された人、すなわち名前を使われた本人は何の責任も負わないことが多いのです。
従って、どうしても、委任状を使うときは印鑑証明を添付してもらい、かつ、直接委任状の本人(委任者)に電話をして、代理人を使ったか、何を委任したか、当該行為をさせて良いか、等確認するとかが絶対に必要です。電話で確認したときは、その日時に確認した旨を契約書に明記しておけば万全です。
契約書に書くべき最低限の事項
1.当事者・・・・・個人か法人か、本名か
2. 契約の目的・・・何がしたいのか、何をさせたいのか
3. 契約期間・・・・いつからいつまでの契約か
4. 債務の内容・・・いつ、何を、どの様にするか
5. ペナルティー・・約束を破った時の制裁
6. もしもの為に裁判管轄の合意
遠方の当事者の時に、裁判所も遠方になったのでは費用もかかり問題があるので、近い裁判所に管轄を定めておくこと
時効とは?
皆さんは時効という言葉を聞いたことのない人の方が珍しいくらい耳にされていると思いますが、その具体的な内容となると、法律が複雑である分正確に理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。
その全てをお話することは、ページ上無理がありますのでその概略だけでも知っていただき、日常生活に役立ててください。
時効の種類
大きく分けると、取得時効と消滅時効があります。
取得時効…真実権利者でない者があるものを一定期間自分のものだと思って占有していると、そのものの権利を取得すること。
消滅時効…権利者が一定期間、その権利の行使をいない場合、その権利が消滅してしまうこと。
借りたものは返すのが当たり前だし、人の土地を占有したからってそれが自分のものになるということは社会正義に反するようにも見えますが、以下の理由があるのです。
権利を長い間行使しない者は法的に救済する必要がない。
自らその権利を放置しておくことは、権利を証明する事が困難になっていき、また今ある事実関係の安定が害されてしまうからです。
たとえばAさんが自己のものとしてある土地を占有したとしましょう。何十年も占有を続ければ、近所の人はあの土地はAさんのものだという認識が出てくるでしょうし、Aさんもその土地を売ってしまうかもしれません。その後で「あの土地の本当の所有者は俺だ」と言ってきたら取引関係はうまくいかなくなるし、社会の混乱が発生するかもしれません。
そこで一定の事実を認めることにより法的安定性が保たれ、取引も安心して行なうことができるのです。
消滅時効期間
時効期間は一律何年と規程されているのではなく、各種内容により異なっています。これはさっきも述べたように、法的安定性に着目し、より早く時効に係らせるほうが社会の安定という面で良いのではというものに対しては、比較的短期に設定されています。
民法上の短期消滅時効
(1年)
芸人等の賃金
運送費
旅館、料理店、映画館、野球場等の宿泊料、飲食料、席料
レンタルビデオ、レンタカー等の賃料
(2年)
弁護士、公証人の報酬
生産者、卸売商人、小売人が売った産物や商品の代価
床屋さん等家に居ながらの仕事をする人の料金
塾等の教育費用
離婚による財産分与請求債権
(3年)
医師、薬剤師の報酬
技術者、棟梁、請負人の費用
不法行為の損害賠償債権
(5年)
地代、家賃、扶養料等の年払いか月払いで定期的に支払われる債権
◎その他の民事債権は「10年」
債権以外の財産権は「20年」
商事債権は「5年」(商人間の金銭消費貸借債権等)
消滅時効の起算日
1.弁済期の定められた債権の消滅時効は弁済期から進行する。
2. 弁済期の定めのない債権は契約成立の時から進行する。
3. 不確定期限付の債権は期限が到来したときから進行する。
4. 停止条件付債権の場合は条件成就から進行する。
5. 債務不履行による損害賠償債権は、本来の債務の履行を請求できるときから進行する。
6. 不法行為による損害賠償債権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから進行する。(3年)
7. 賃貸借契約に基づく敷金返還請求権は目的物返還のときから進行する。
消滅時効にかからないもの
何でもかんでも時効により消滅してしまうものではありません。
1. 所有権、所有権に基づく登記請求権・物件的請求権
2. 占有権、留置権、先取特権、質権、共有物分割請求権
は消滅時効にはかかりませんが、取得時効の反射効によりその権利を失うことになる場合もあります。
取得時効
消滅時効期間には様々な期間がありましたが、取得時効は「10年」又は「20年」の2種類しかありません。10年で取得する場合の要件は次のとおりです。
1. 所有の意思を持って占有した者である。(所有権の場合)(自主占有)
注:賃借しているものは他主占有といい、この場合所有する意思ではなく「借りる」という意思なので所有権の時効取得はできません。
2. 自己の為にする意思を持って財産権を行使する者である。(所有権以外)
3. “平穏”(占有の取得、維持について暴行強迫等の違法行為がない。)“公然”(占有の取得、維持について秘匿していない。)“善意(自己のものであると信じている。)“無過失”(自己のものであると信じることについて過失がない。)
4. 占有の継続。“悪意”または“有過失”の場合は20年占有すればその権利を取得できる。
それでは、その時効を止める方法はないのでしょうか
時効の中断事由
裁判上の請求
1.訴訟
2. 支払督促
3. 起訴前和解
4. 破産手続き参加
5. 会社更生手続きによる債権届出
6. 不動産競売開始決定書の送達
7. 強制執行の配当要求
8. 仮差押、仮処分、差押、担保権行使による競売申立
9. 調停
裁判外の請求
これはよく内容証明により催促などをすることです。
確かに請求ですが、裁判外であるためその効力は6ヶ月間でありその期間内に、他の中断事由を行使しなければ、中断の効力が失われてしまいます。
裁判手続きは面倒なので、この請求を6ヶ月ごとにすればいいのではと思われますが、これは認められていません。
承認
通常は時効により利益を受ける者から、例えばその債務の存在を認める意思表示をいいます。
1. もう少し待ってくれという意思表示
2. 一部金の支払
3. 債務額を減額してくれという意思表示
民法の改正があり,職業別の短期消滅時効の条文が削除され,また,商法の5年という消滅時効の条文が廃止されました。改正法施行後は,消滅時効期間について,次のとおりとなりました。
簡単に言うと,短期の消滅時効はなくなり,消滅時効については,一律となりました。
改正後の民法166条によれば,
@債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき,
A権利を行使することができる時から10年間行使しないとき,
と改正されました。
これが原則となりますが,人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求の消滅時効期間は,上記Aの10年間というものを20年間としております。
なお,この時効期間については,改正民法の施行前と後で適用する期間が異なります。つまり,施行日前に生じた債権については,従前の法律が適用されるということになり,今しばらくは,上記のような短期消滅時効期間を知っておく必要があります(民法(債権)の施行日は,一部を除き令和2年4月1日施行となる)。