妻が保証人等になっていないのであれば、支払う必要はありません。しかし、日常家事債務つまり、食料品費、光熱費、教育費等は夫婦共同の利益となるものであり、夫婦が連帯責任をを負担するという規定があるため、この場合は妻もその責任を負うことになると思います。
金銭の貸借で、夫に内緒で妻が消費者金融などから生活費としてお金を借りた場合に、その返済が滞ると貸主は、日常家事債務であるから夫にも支払う義務があると請求がくるケースもありますが、金銭を借りうけた事情や背景も考慮するため、一概に夫にも支払義務があるとまでは言えません。
婚姻により発生する費用は夫婦で分担しなければならないという規定があるので、請求する事は可能である。しかし、妻にも別居の責任がある場合は、その額が減額されます。
それでは、婚姻関係の破綻についての責任が、双方にある場合はどうなるのでしょうか。通常の婚姻費用分担義務は、自分と同程度の生活を保証するものでなければなりません(札幌高決昭50.6.30)が、双方に責任がある場合判例では、通常の社会人として生活するのに必要な程度で足りる・生活保護基準に準拠した分担で足りる・社会的的に相当と思われる分担をしている限り、自己と同一の生活水準の分担をしなければならないものではない等、内容が変わってきます。
また、離婚訴訟継続中でも、離婚が成立するまでは、婚姻費用を分担しなければなりません(東京高決昭51.5.18他)。
財産分与を受ける事ができますが、この問題を未然に防ぐためには、共有名義にしておくと良いと思いますが一概にはどの方法がいいとは言えません。妻にも財産形成の寄与が認められれば、例えば評価額が2,000万円の不動産で寄与度が50%と認められれば、1,000万円の分与が認められます。
また、悪意の遺棄にあたるとされた夫の例では、財産形成に対する妻の寄与、離婚後の扶養、慰謝料等一切の事情を斟酌して土地建物の分与を認めたものもある。このように、夫の単独所有となっていても、妻に住居そのものを分与したり、妻に共有持分を認めたりしています。
民法では次の理由があれば、離婚の訴えを提起することができるとされています。
1.相手方に不貞行為があった。
不貞行為とは必ずしも明確ではないものの、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」という最高裁判例がある。
配偶者が不貞行為を行なえば、それだけで慰謝料請求が認められるという単純なものではなく、他方の者にも他の有責事由が認められる場合には、双方の有責性が比較考量して判断され、不貞行為を行なった者の有責性の度合いが大きいと判断されなければ、慰謝料請求が認められない。
また、婚姻関係が既に破綻した後に性的関係が発生した場合には、破綻と性的関係の間に因果関係が認められず、不貞行為があったとしても、有責配偶者とはいえない(最判昭46.5.21)。
2.相手方から悪意で遺棄された。
悪意の遺棄とは一言でいうと、正当な理由無く民法上の同居・協力・扶助義務を履行しないことをいう。
「悪意」とは、社会倫理的非難に値し、積極的に婚姻生活を廃絶するという、遺棄の結果である害悪の発生を企図し、もしくはこれを認容する意思をいうとされている(判例)。
また「遺棄」とは、相手を置き去りにして出ていくことだけでなく、相手から出ていくように仕向け、帰来を拒む行為も該当する。
3.相手方の生死が3年以上不明である。
ここでいう生死不明とは、生存の証明も死亡の証明もできない場合をいうのであって、単に行方不明とは異なる。生存が推定されれば、生死不明とはいえない。
これ以外に、失踪宣告により婚姻関係を解消する方法があるが、後に失踪者の生存が確認され失踪宣告が取り消された場合、重婚関係が生じるということも考えなければならないので、離婚判決の方が、後々の紛争を予防できる。
4.相手方が強度の精神病にかかり回復のみこみがない。
強度の精神病とは、精神分裂症・早発性痴呆症・躁鬱病・偏執病等の高度の精神病をいうのであり、アルコール中毒・モルヒネ中毒・ヒステリー・神経衰弱症などはここにいう精神病には含まれないと解されている。
しかし、精神病であれば直ちに離婚判決が出るのではなく、「精神障害の程度が婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務を十分に果たし得ない程度に達しているか否かによって決すべきである(判例)」と定義したものがある。
5.その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある。
これはケースバイケースであり、判例の蓄積もある程度あるが、明確な基準は見当たらず、また以上の離婚原因1〜4との複合型もある。
婚姻を継続していくのに困難を伴うほどであれば認められます。
「婚姻当初約4か月はほぼ正常な性交渉があったが、その後夫が拒絶し、他の男性と同性愛の関係となった事案で、婚姻を継続していく事が困難である旨を認定した」(名古屋地判昭47.2.29)
いくつか条件がありますが、それらをクリアーすれば離婚請求はできます。
@長期に渡り、別居状態である。
数年では難しいと思われる。最高裁判所が有責配偶者からの離婚請求を認容したもので最短別居期間は8年位です。しかしこれは各事例により異なり別居期間が10年を超えていても認められないケースもあります。
A夫婦の間に未成熟な子がいない。
未成年ということではなく、経済的に独立した生活費を獲得できない者と社会が認知している者。
B離婚をしても相手方が精神的・社会的・経済的に過酷な状況におかれる虞のないこと。
以上の他、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限りにおいて有責配偶者からの離婚も認容される。
財産分与については、離婚成立後2年以内、慰謝料については離婚後3年を経過すると、時効で消滅してしまいます。
法律の上ではどちらにしなければならないといういう規定はありません。しかし、離婚後も2人で親権を行使する事は許されていません。また、親権者を定めない限り、協議離婚はできないので調停手続等を利用せざるを得ないと思います。
また親権者と監護権者は同一人がなる必要はなく、一方が親権者であり他方が監護権者となることができます。さらに監護権者を祖父、祖母とすることも可能です。
重要な事は、必ず子供の人権を尊重し、子供の将来の福祉を真剣に考えたうえで、結論を出し欲しいということです。
結婚後築いた財産がなければ、通常は、財産分与を支払う義務はありません。
例外として、婚姻中の生活費の清算の必要がある場合、あるいは、離婚後一方の配偶者が収入を得る見込みがないので他からの扶養を要する場合(扶養的財産分与)は、若干の財産分与が認められます。
扶養的財産分与として、月額10万円を3年分として360万円とするなどです。
慰謝料については、離婚に至る責任が100%あなたにあるのなら、慰謝料として相当額を支払う義務があります。責任が夫婦双方に同じ位あるのなら慰謝料を支払う必要はありません。あなたの責任が大きいなら若干支払う必要があるでしょう。
慰謝料とは、相手方の精神的苦痛を金銭で解決するものなのです。
あとは、子どもの親権者を決めます。幼い子の場合、親権者はほとんどの場合母親です。
子どもを母親が育てるのなら養育費を決めます。子供2人の場合は4万円ないし6万円前後が多いです。
以上が話合いで決まれば離婚届けを出して離婚が成立しますが、話合いがまとまらなければ家庭裁判所で話合い(調停)、話し合いがまとまられけれは、一般的には離婚訴訟ということになり、判決によって決着をつけることになります。
審判ということもありますが、これは稀です。 しかし、早期に解決を図る必要のある婚姻費用の分担額などは審判で決定されることもあります。
仮に判決が出たとしても、あなたの場合慰謝料は1000万円にはならないでしょう。
結婚前から持っていた財産、あるいは、相続財産などがあり、配偶者がその維持に寄与した場合は、離婚に際し財産分与が認められます。
10 35歳の会社員です。私が原告となり、現在離婚裁判中です。婚姻期間5年、別居期間1年、離婚調停は不調でした。離婚理由はセックスレスです。子供はありません。マンションは夫名義なのですがその財産が欲しいわけではなく、私はただ離婚したいだけです。
しかし、夫は一向に「納得できない」と言い、「離婚はしない」と言っています。だから、離婚するには判決しかないと思っているのです。しかし物的証拠が何もないので、勝てるのか不安です。
セックスレスは夫婦の間に愛情があり、信頼があれば問題ではありません。しかし、法的には婚姻生活が破綻して、あなたがそれに責任のない場合は離婚判決が出ます。
上記原因で別居しているのですから婚姻生活は破綻しています。あなたに責任があるとかの特別な事情がない限り、離婚判決は出ると思われます。慰謝料も請求できます。物的証拠が何もない場合、あなたが陳述書を書いたり、尋問に答えるなどして法廷で述べることで一つの証拠とすることができます。
参考判例
福岡高裁平成5年3月18日判決
原審判決の慰謝料120万円を認めている。
被控訴人(妻)と控訴人(夫)の婚姻生活は、控訴人が自営業であつて収入に不安定な面があるため、当初からその生計に不安定要因を抱えていたものであるが、被控訴人としてもこれを納得しながら、他方では控訴人が被控訴人と話し合つて十分な説明をしないまま、生活費に事欠く状態であるのに、交際と称して出歩くことから控訴人の態度に思いやりのなさを感じたもので、控訴人においても多忙であるとはいえ、家庭を顧みて被控訴人の不満を解消する努力が十分でなかつたといえるし、また、被控訴人と控訴人との性交渉は入籍後約5か月内に2、3回程度と極端に少なく、平成2年2月以降は全く性交渉がない状態であるのに、反面控訴人自身はポルノビデオを見て自慰行為をしているのであつて、性生活に関する控訴人の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常というほかはなく、これらの点を指摘する被控訴人に対して、控訴人は、一旦は改善を約しながら依然として改めていないこと、被控訴人は、控訴人への愛情を喪失し、婚姻生活を継続する意思が全くないこと等の事情からすると、控訴人と被控訴人との婚姻生活は既に破綻しているものといわざるを得ず、被控訴人と控訴人との間には『婚姻を継続し難い重大な事由』があると認めるのが相当である。
岡山地裁津山支部平成3年3月29日判決
結婚後9か月で協議離婚した夫婦で、離婚の原因が妻の性交渉拒否にあるとして、妻に慰藉料150万円の支払いと結納代わりの指輪の返還をを命じた。
原告・被告A子間の婚姻は、前記検討の結果からすると、結局被告A子の男性との性交渉に耐えられない性質から来る原告との性交渉拒否により両者の融和を欠いて破綻するに至つたものと認められるが、そもそも婚姻は一般には子孫の育成を重要な目的としてなされるものであること常識であつて、夫婦間の性交渉もその意味では通常伴うべき婚姻の営みであり、当事者がこれに期待する感情を抱くのも極当たり前の自然の発露である。しかるに、被告A子は原告と婚姻しながら性交渉を全然拒否し続け、剰え前記のような言動・行動に及ぶなどして婚姻を破綻せしめたのであるから、原告に対し、不法行為責任に基づき、よつて蒙らせた精神的苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。
京都地裁平成2年6月14日判決
夫が性的交渉を持たなかつたことが原因で離婚に至つたとして、協議離婚後に、妻が夫に対して慰謝料を求め、慰謝料請求を認容した。
原被告は昭和63年4月8日婚姻届をし、同年7月7日離婚届だした。結局、被告が性交渉に及ばなかつた真の理由は判然としないわけであるが、前記認定のとおり被告は性交渉のないことで原告が悩んでいたことを全く知らなかつたことに照らせば、被告としては夫婦に置いて性交渉をすることに思いが及ばなかつたか、もともと性交渉をする気がなかつたか、あるいは被告に性的能力について問題があるのではないかと疑わざるを得ない。そうすると、本件離婚により原告が多大の精神的苦痛を被つたことは明らかであり、被告は原告に対し慰謝料500万円の支払をする義務があるというものである。
京都地裁昭和62年5月12日判決:判例時報1259号92頁
夫が性的不能を告げずに結婚し、同居期間約3年半の夫婦において、婚姻に際し妻に自己の性交不能を告知せず、またその後も性交不能が続いている場合には、民法770条1項5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断した。
慰謝料は200万円であった。
離婚手続には下記の4通りの方式があります。
協議離婚 (民法第763条)
調停離婚
審判離婚(審判離婚の件数は極めて少ない)
裁判離婚(判決による離婚) (民法第770条)
1 協議離婚 (民法第763条)
夫婦間で離婚の条件を話合い、協議が成立した後、離婚届を作成します。
離婚届の作成に当たっては子供の親権者の決定、当事者及び保証人2名の署名・捺 印も必要です。
離婚届を市区町村役場に届出・受理された時点で離婚が成立します。
民法 第763条[協議上の離婚] 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
2 調停離婚 (家事事件手続法244条)
夫婦間の話合が不成立の場合、家庭裁判所に調停を申立てる事になります。
家裁の調停は、円満調整(婚姻関係・内縁関係)と夫婦関係解消(離婚・内縁関係解消) に分かれています。
未だ離婚の決心がつかなくて復縁の話し合いの場を求めている人には円満調整の方 向で、離婚の決意が固く離婚の為の話し合いの場を求めている人には夫婦関係解消 の方向で調停をしてくれますので、誰でも安心して利用できる機関です。
●調停成立
調停において当事者間の合意が成立した場合、裁判官(審判官)・書記官が立会い「調停調書」を作成します。この時点で調停離婚が成立します。
調書作成後、離婚届を作成し、調停調書謄本を添付して10日以内に市区町村役場に届出します。これを怠ると過料の制裁を受けます。
●「調停調書」には判決と同一の効力があります。(家事事件手続法268条1項))
家庭裁判所は、不払いの場合には、履行の勧告・命令を出す事ができます。(家事事件手続法289条・290条))
又、家庭裁判所は、命令違反に対する制裁をする事もできます。(家事事件手続法290条5項))
1. 夫婦の一方は、左の場合に限り、離婚の訴を提起することができる。
@配偶者に不貞な行為があったとき。
A配偶者から悪意で遺棄されたとき。
B配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
C配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき。
Dその他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第1号乃至第4号の事由があるときでも一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
離婚の訴えの訴訟手続については、人事訴訟法の規定が適用される(人事訴訟法第2条1号)。
なお、家事審判法第18条により調停前置主義がとられており、調停により離婚の合意が成立する場合もある(家事審判法第21条第1項)。
調停が成立しない場合は家事審判手続に移行し(家事審判法第24条)、審判により離婚が認められる場合もあるが上記のとおりあまり多くはなく、離婚訴訟に発展することが多いのが現状のようです。
離婚協議書
第1条(離婚)
○○○(以下「甲」という。)と,○○○(以下「乙」という。)は,本日,協議により離婚することに合意した。
第2条(親権及び監護権)
1 甲乙間の未成年の子○○○○(平成○○年○月○日生,以下「丙」という。),
子○○○○(平成○○年○月○日生,以下「丁」という。)及び○○○○(平成○○年○月○日生、以下「戊」という。)の親権者を乙と定める。
2 乙は丙及び丁並びに戊の監護者となりそれぞれが成年に達するまで,これを引き取り養育する。
第3条(養育費)
1 甲は,乙に対し,丙の養育費として,平成○○年○月から丙が成人に達するまで毎月末日限り金3万円,丁の養育費として,平成○○年○月から丁が成人に達するまで,毎月末日限り金3万円,戊の養育費として,平成○○年○月から戊が成人に達するまで,毎月末日限り金3万円,合計9万円を乙が指定する預金口座に振込にて支払う。
2 上記養育費が諸物価の上昇その他の事由により不相当になったときは,乙は,甲に対し,その増額を請求することができる。
3 甲は,丙丁戊の高等学校,大学または各種専門学校等へ進学の際に発生した費用の一部を負担すること乙に約し,乙は,この場合,請求書及び領収書などを提示して請求するものとする。
第4条(特別の費用)
乙が,丙丁戊の病気及び怪我のために特別出費したときは,甲は乙の請求により,その費用を直ちに支払うものとする。
第5条(慰謝料)
1 甲は,乙に対し,慰謝料として金400万円の支払義務があることを認め,これ を4回に分割して,平成25年11月から平成26年2月まで毎月末日限り金100万円ずつを乙の指定する金融機関の預貯金口座に振り込んで支払う。なお,振込手数料は甲の負担とし,利息は定めない。
2 甲について,下記の事由が生じた場合は,乙の通知催告を要さず,甲は、当然に期限の利益を失い,乙に対して残金を直ちに支払う。
(1) 分割金の支払いを1回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき,強制執行,競売,執行保全処分を受け,あるいは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産,民事再生手続開始の申立てがあったとき。
(4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(5) 乙の責めに帰することができない事由によって,所在が不明となったとき。
第6条(財産分与)
甲及び乙は,本件離婚に基づく財産分与として,甲名義の下記不動産を乙の所有とすることとし,甲は乙に対し,離婚による財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをするものとする。なお,登記手続費用は,甲の負担とする。
記
物件の表示
第7条(面接交渉)
乙は,甲に対し,1か月に一度,丙丁戊と面接交渉をさせることとする。面接交渉の日時,場所,方法については,丙丁戊の福祉を害することがないように甲乙協議のうえ決定する。
第8条(通知義務)
甲及び乙は,住所,居所,連絡先が変更になった場合,遅滞なく必要な範囲で互いに通知義務があることを確認する。
第9条 (清算条項)
甲及び乙は,本協議書に定めるほか,互いに他に何らの債権債務が存しないことを相互に確認する。
平成○年○月○日
甲:(住所)
(氏名)
乙:(住所)
(氏名)